賢い住宅ローンの付き合い方について(後編)
賢い人は、住宅ローンの金利よりも高い金利でお金が増えるところにお金を回す
住宅ローンの返済にお金を回すということは、考え方を変えると「住宅ローンと同じ金利でお金を運用する」ようなものと言えませんか?とは言え、厳密に計算すると違いはありますが同じような効果を得ることはできると言えます。
では「住宅ローンの金利よりも高い金利でお金を運用できるところにお金を預けたらどうなるのか?」というと、単に住宅ローンの返済のみにお金を回して返済年数を短く設定したり、頑張って繰り上げ返済をして返済年数を短くしたりするよりも、将来手元に残せるお金は、はるかに多くなるからです。
前編の例では「住宅ローンの返済年数を15年短くすること」で、住宅ローンに支払うお金を「約240万円減らすこと」ができました。
では、毎月3万円を利回り(金利)3%で運用できる預け先へ35年間回した場合には、どうなるか計算して見ましょう。
計算の条件は以下の通りです。
- 住宅ローン借入額:2,000万円
- 返済方法:元利金等返済
- 金利
- 20年返済の場合:1.27%
- 35年返済の場合:1.34%
- 返済年数35年の方は、返済年数20年との毎月の返済額の差額を毎月積立投資に回す
20年返済 | 35年返済 | |
毎月返済額 | 94,408円 | 59,681円 |
毎月返済額の差額 | +34,727円 | |
総返済額 | 22,657,806円 | 25,066,009円 |
総返済額の差額 | +2,408,203円 | |
35年間の運用益(3%) | +11,366,541円 | |
手元に残るお金の差 | +8,958,338円 |
20年返済は、短期間で住宅ローンを返済することで240万円の節約をしましたが、35年返済の方は積立運用によって「1,136万円の運用益」を得ます。差額の895万円分、住宅ローンを35年に設定して毎月の住宅ローン返済額を減らし、運用に回した方がお得だということになりますよね?
では、住宅ローンを早く終わらせて運用した場合はどうなるのか?
住宅ローンを繰上返済などして早く返すよりも、運用したほうが有利かもしれないと言いますが「じゃあ住宅ローンを早く終わらせて、それから住宅ローンを返済していたお金で運用したほうが有利なんじゃないか?」と思われるかもしれません。
では計算してみましょう。条件は以下の通りです。
- 住宅ローン借入額:2,000万円
- 返済方法:元利金等返済
- 金利
- 20年返済の場合:1.27%
- 35年返済の場合:1.34%
- 返済年数35年の方は、返済年数20年との毎月の返済額の差額を毎月積立投資に回す
- 返済年数20年の方は、住宅ローンを完済する20年後から毎月の住宅ローン返済額だった金額を15年間積立投資をする。
20年返済 | 35年返済 | |
毎月返済額 | 94,408円 | 59,681円 |
毎月返済額の差額 | +34,727円 | |
総返済額 | 22,657,806円 | 25,066,009円 |
総返済額の差額 | +2,408,203円 | |
運用益(3%) | +4,709,314 円 | +11,366,541円 |
手元に残るお金の差 | +4,249,024円 |
これを見ると住宅ローンを20年で返済する場合、35年で返済する場合に比べて住宅ローンの利息を240万円節約できます。また、住宅ローンを完済してから15年間、それまで住宅ローンの返済に充てていた94,408円を積立運用に回します。これで「470万円の運用益」を得られますので、住宅ローンの節約額と運用益を合わせると「710万円のお得」ということになります。
一方の住宅ローンを35年で返済する場合は、運用益で「約1136万円」です。差額の「約424万円」こちらの方がお得になります。
結果、この場合でも「住宅ローン返済にお金を回さずに運用したほうが得」という計算になります。
「住宅ローンを繰り上げ返済しろ!」「返済年数を短くして早く返せ!」は昔の常識です。賢い人は、「将来手元に残るお金を多くするためにどの手段を取るべきか?」で考える
「住宅ローンの返済は早く終わりましたが、手元にあまりお金が残っていません」という状態と「住宅ローンは残っていますが、手元にはそれなりにお金が残っています」という状態では、いったいどちらのほうが「安心」できるのでしょうか?
住宅ローンの返済年数を短く設定したり、繰り上げ返済をして早く返済を終わらせようとする本来の理由・・・また、借入額を減らす本来の目的、理由は何だったのか?ということを考えれば、やはり後者のほうが、安心できる状態だと言えるのではないでしょうか?
もちろん、現在でもまだ続いている「低金利の時期」にしかできない話ではありますが、低い金利のところにお金をどんどん入れるよりも、高い金利でお金を運用できるところにお金を入れたほうが、将来手元に残るお金は多くなるので、より安心感を得ることができるということですよね?
ということで、私は「住宅ローンの返済年数は、長ければ長いほどよい」という結論に至りましたが、皆さんはどう思われましたか?
と、今回は以上となります。